この記事の要約を3行で紹介
- ZohoがAsimov Roboticsを買収
- AI・ロボット研究拠点を設立
- KSUMと連携しスタジオ開設
インドの大手SaaS企業であるZoho Corporationは、2025年7月にロボティクス企業Asimov Roboticsを買収し、同年12月現在、AIとロボット工学のR&D（研究開発）を強化するディープテック戦略を推進しています。この動きは、従来のソフトウェア中心のビジネスモデルから、ハードウェアを含む高度な技術開発へと領域を拡大する重要な転換点となります。また、地方拠点での雇用創出やスタートアップ支援のエコシステム形成も視野に入れた、包括的な経営戦略の一環として注目されています。
ZohoによるAsimov Robotics買収の概要
- Zohoは、インド・ケララ州コーチ（Kochi）を拠点とするディープテックスタートアップAsimov Roboticsを買収しました。
- Asimov Roboticsは2012年創業の企業で、医療用ロボットや多目的サービスロボット、危険な作業を行う産業用ソリューションの開発を行っています。
- 具体的な買収額などの財務詳細は非公開とされていますが、2022年のGenroboticsへの出資に続く、ロボティクス分野への重要な投資です。
- この買収により、Zohoは主力であるSaaSビジネスに加え、物理的なロボティクス技術を自社ポートフォリオに組み込むことが可能になります。
- AI技術とロボット工学の融合は、将来的な自動化ソリューションの高度化に不可欠であり、Zohoの技術的な優位性を高めることが期待されます。
- 創業から実績のあるAsimovの技術力を取り込むことで、ゼロからの開発ではなく、既存の高度な技術基盤を活用した迅速な市場展開が見込まれます。
コッタラッカラ新キャンパスでのR&D体制強化
- 買収に伴い、Asimovのチームはケララ州コッタラッカラ（Kottarakkara）にあるZohoの新キャンパスで活動を継続しています。
- この新キャンパスは250人を収容可能な規模を持ち、AIとロボット工学の研究拠点として位置づけられています。
- ZohoのCEOであるShailesh Davey氏は、長期的なR&D能力の構築に焦点を当てていることを明らかにしています。
- 都市部ではなく地方（Rural）にハイテク研究拠点を置くことは、Zohoが推進する「地方からの技術開発（Decentralization strategy）」を体現しています。
- 地域の優秀な人材を雇用し育成することで、都市部への一極集中を防ぎながら、グローバルな競争力を持つイノベーションを生み出す狙いがあります。
- 研究開発環境の整備は、ディープテック分野での長期的な成長を支える土台となり、持続可能なビジネスモデルの構築に寄与します。
KSUMとの連携とDeep Tech Product Studioの設立
- ZohoはKerala Startup Mission (KSUM)と提携し、新たにDeep Tech Product Studioを設立することを発表しました。
- このスタジオは、ディープテック分野における製品開発とイノベーションを促進するための専門組織です。
- 他社との協力を通じてディープテックの取り組みを拡大する方針が示されています。
- 公的機関であるKSUMとの連携は、単なる一企業の利益にとどまらず、地域全体のスタートアップエコシステムを活性化させる効果があります。
- 新たなスタジオの設立により、起業家や技術者に対してリソースやノウハウが提供され、次世代のハードウェアおよびソフトウェア製品の誕生が加速します。
- これにより、Zohoは地域のイノベーションハブとしての地位を確立し、関連企業とのシナジーを生み出すことが可能になります。
「自社開発」から「戦略的買収」への経営シフト
- Zohoは従来、「買収より自社開発（Build vs Buy）」の哲学を掲げてきましたが、今回の動きはその戦略からのシフトと分析されています。
- Genroboticsへの出資や今回のAsimov買収は、外部の高度な技術を取り入れる積極的な姿勢を示しています。
- CEOの発言からも、パートナーシップや買収を通じた技術獲得が今後の成長戦略の一部であることが確認されました。
- 変化の激しいAIやロボティクス市場において、すべてを自前で開発する時間はリスクとなるため、戦略的な買収は合理的な経営判断といえます。
- 外部の専門知識を迅速に統合することで、製品開発のサイクルを短縮し、競争の激しい市場での優位性を確保できます。
- この柔軟な戦略変更は、Zohoが成熟したグローバル企業として、より広範な技術領域へ挑戦する準備が整っていることを示唆しています。
まとめ
ZohoによるAsimov Roboticsの買収は、単なる企業買収にとどまらず、SaaS企業がフィジカルな技術領域へ進出する象徴的な事例です。コッタラッカラの新キャンパスやKSUMとの連携を通じたディープテックエコシステムの構築は、インド地方部からのイノベーション発信を加速させるでしょう。今後は、統合されたロボティクス技術がZohoの既存製品とどのように連携し、新しいビジネス価値を創出するかが注目されます。
参考リンク
- Zoho Acquires Asimov Robotics
- Zoho Acquires Asimov Robotics Amid Deeptech Push
- Zoho Acquires Asimov Robotics to Accelerate Robotics and Deeptech R&D Push
- Indian SaaS firm Zoho acquires Asimov Robotics
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