2025年12月、AI技術の最前線で大きな動きがありました。Z.ai（旧Zhipu AI）が、エンジニアリングワークフローに特化した新しい大規模言語モデル「GLM-4.7」を発表しました。このモデルは、高度なプログラミング能力と複雑なタスク処理能力を持ちながら、オープンソース（MITライセンス）として提供される点が画期的です。最新の開発ツールやエージェントシステムとの連携も視野に入れた設計となっており、ソフトウェア開発の現場に即戦力として導入できる性能を備えています。本記事では、ITエンジニア必見のこの新モデルについて詳細を解説します。

概要

圧倒的なコーディング性能と「思考」するAI

GLM-4.7の最大の特徴は、その卓越したプログラミング能力にあります。ベンチマークテストの結果は驚異的で、ソフトウェアエンジニアリングの実務能力を測るSWE-bench Verifiedで73.8%を記録しました。これは、業界最高峰とされるClaude 3.5 Sonnet（1022 version）の性能に極めて近く、オープンソースモデルとしては画期的な成果です。

また、コード生成の正確さを競うCode Arenaのブラインドテストにおいても、オープンソースモデルの中で1位を獲得しています。この高い性能を支えているのが、以下の技術的特徴です。

• Preserved Thinking（思考の維持）: モデルが「思考してから行動する」プロセスを維持する機能を搭載しています。これにより、複雑な推論が必要なタスクでも論理的な破綻を防ぎ、安定した出力を実現します。
• MoEアーキテクチャ: 3550億という巨大なパラメータ数を持ちながら、推論時にアクティブになるのは320億パラメータに抑えることで、高い知能と処理効率を両立しています。

開発現場で即使える実用性とツール連携

Z.aiはGLM-4.7を「実験段階」ではなく、実運用レベル（Production-Ready）のモデルとして位置づけています。そのため、実際のソフトウェア開発フローに組み込むための機能が充実しています。

まず、コンテキストウィンドウは200Kトークンに対応しており、大規模なコードベースやドキュメントを一度に読み込むことが可能です。さらに、最大出力トークン数は128Kに達するため、長大なコードの生成や詳細な技術レポートの作成も途切れることなく行えます。

既存の開発ツールとのエコシステム連携も強化されています。

• エージェントツールへのネイティブ対応: Claude Code、Cline、Roo Codeといった主要なコーディングエージェントツールに標準対応しており、導入後すぐにワークフローへ統合できます。
• フロントエンド生成能力の向上: コードのロジックだけでなく、視覚的な出力能力も強化されました。より美しく機能的なWebページやスライド資料を生成することが可能になり、デザインの実装工数も削減します。

オープンソースLLMの新たな基準

これまでのオープンソースモデルは、性能面で商用モデル（プロプライエタリモデル）に一歩及ばないケースが多く見られました。しかし、GLM-4.7の登場によりその差は確実に縮まっています。特にMITライセンスでの公開は、企業にとって非常に大きな意味を持ちます。

ライセンス料を気にすることなく、高性能なAIを自社のサーバーやクラウド環境（オンプレミス等）で運用できるため、機密性の高いコードやデータを外部に出したくない企業にとっては最適な選択肢となります。Z.aiの今回の発表は、AI技術の民主化をさらに推し進め、世界中のエンジニアがより高度なツールを自由に扱える時代の到来を告げるものです。

まとめ

Z.aiが公開した「GLM-4.7」は、オープンソースLLMの歴史における重要なマイルストーンとなります。

• SWE-bench Verified 73.8%という、Claude Sonnet 4.5に迫る世界トップクラスのコーディング性能。
• MITライセンスによる商用利用の自由度の高さと、オンプレミス運用への適性。
• 「思考する機能」や主要な開発ツールとの連携による、実務への即応性。

2025年の年末に登場したこのモデルは、来たる2026年のソフトウェア開発トレンドを大きく左右する存在になるでしょう。エンジニアやIT企業の意思決定者は、この新しい選択肢をテストし、自社のワークフローへどう組み込めるか検討する価値が十分にあります。