2025年12月、政府・与党は「令和8（2026）年度税制改正大綱」を決定しました。今回の改正では、家計の安定的な資産形成を支援するためのNISA（少額投資非課税制度）の拡充や、長年の議論の焦点であった仮想通貨（暗号資産）税制の抜本的な見直しが盛り込まれています。金融市場や個人投資家にとって極めて影響の大きい決定となりました。また、懸念されていた金融所得課税の一律増税は見送られ、経済成長と分配の好循環を目指す方針が維持されています。インフレや為替変動リスクへの備えとして、個人の資産運用がますます重要になる中、今回の改正内容を詳しく解説します。

概要

未成年版NISA「こどもNISA」の創設と詳細

今回の税制改正の目玉の一つが、2027年より開始される未成年版NISA（未成年者特定累積投資勘定）の創設です。2023年末で新規買付が終了した「ジュニアNISA」の後継制度として位置づけられていますが、使い勝手は大幅に向上しています。

• 対象年齢：0歳から17歳（未成年者）
• 年間投資枠：60万円
• 非課税保有限度額：600万円
• 対象商品：長期・分散・積立投資に適した一定の投資信託（成人のつみたて投資枠と同様）

特筆すべき点は、制度の柔軟性です。ジュニアNISAでは原則18歳まで払い出しが制限されていましたが、新制度では12歳以降の払出制限緩和が盛り込まれました。これにより、中学・高校進学時の教育資金ニーズにも対応しやすくなっています。

また、口座開設者が18歳に到達した際は、自動的に成人のNISA口座（つみたて投資枠・成長投資枠）へ移行可能となるため、幼少期から成人後まで途切れのない長期的な株式投資信託での運用が可能になります。

暗号資産（仮想通貨）税制の抜本改革

投資家からの要望が強かった仮想通貨（暗号資産）税制についても、大きな進展がありました。これまで暗号資産の利益は「雑所得」として扱われ、給与所得などと合算して課税される総合課税制度が適用されていました。これにより、所得税と住民税を合わせて最大55%の税率が課されていました。

今回の改正大綱では、これを申告分離課税（一律20%）へ変更する方針が示されました。これは、上場株式やFX（外国為替証拠金取引）と同様の税制扱いとすることを意味します。

• 変更前：雑所得（総合課税、最大55%）
• 変更後：申告分離課税（一律20%）

この変更により、暗号資産取引を行う投資家の税負担が適正化されるとともに、確定申告の手続きにおいても、他の金融商品との損益通算など、将来的な制度整備への布石となることが期待されます。

金融所得課税と超富裕層への対応

議論の焦点となっていた「金融所得課税の強化」については、一般投資家への一律増税は見送られました。その一方で、税負担の公平性を確保するため、超富裕層を対象とした「ミニマムタックス（負担適正化措置）」の強化が決定しています。

また、NISA制度の利便性向上策として、口座開設時の住所確認手続き（10年ごと）の廃止も盛り込まれました。これにより、金融機関と投資家双方の事務負担が軽減され、より長期保有しやすい環境が整います。

政府は、貯蓄から投資への流れを加速させるため、増税による市場の冷え込みを避けつつ、超富裕層への課税適正化でバランスを取った形です。これにより、今後も経済成長に向けた投資環境の整備が続くことが予想されます。

まとめ

2026年度税制改正大綱は、個人の資産形成を強力に後押しする内容となりました。

• こどもNISA（2027年開始）：年60万円・総枠600万円で、教育資金形成の有力な選択肢に。
• 暗号資産の分離課税化：税率20%への変更で、仮想通貨市場の健全な発展を促進。
• 投資環境の整備：一律増税の見送りとNISAの手続き簡素化により、長期投資を推奨。

特に未成年版NISAの創設は、子育て世帯にとって非常に大きなメリットとなります。制度開始は2027年からですが、今のうちから家計の金融資産配分を見直し、将来に向けた準備を進めておくことが重要です。