2025年も残すところあとわずかとなりました。本年は株式市場や為替の変動、仮想通貨の動向など、金融・投資分野でも多くのニュースがありましたが、年末にかけて私たちの生活基盤である「医療制度」に大きな変化が訪れています。経済活動の土台となる健康管理において、健康保険証の廃止とマイナ保険証への一本化は避けて通れない課題です。今回は、経過措置終了から約1ヶ月が経過した医療現場の現状と、意外と知られていない救済措置について解説します。

概要

廃止から1ヶ月で見えた医療現場の混乱と課題

2025年12月2日の経過措置終了から約1ヶ月が経過しましたが、医療現場では依然としてシステム移行に伴う混乱が続いています。特に以下の点が大きな課題として浮上しています。

• システムトラブルの頻発: マイナ保険証を利用しようとしても、顔認証エラーやカード読み取り機の不具合により、「資格確認ができない」というケースが散見されます。
• 窓口での対応遅延: 操作に不慣れな高齢者が認証に時間を要したり、エラー対応のために職員の手が取られたりと、待ち時間が増加する傾向にあります。
• 抗議活動の継続: 東京都内などでは、「保険証を元に戻せ」といった集会や署名活動が行われており、システムへの不安や操作の難しさを訴える声は根強く残っています。

移行期間終了後もトラブルが報告されており、マイナ保険証への一本化は避けられないものの、現場レベルでの定着にはまだ時間がかかることが予想されます。

「使えなかった」は誤解？2026年3月までの特例措置

多くの人が「2025年12月以降、従来の健康保険証は一切使えなくなる」と認識していましたが、実は救済措置が存在します。もし手元にある従来の保険証の有効期限が切れていたとしても、即座に全額自己負担になるわけではありません。

• 2026年3月末までの猶予: 11月の厚労省通達により、システムトラブルや周知不足への対応策として、来年3月末までは従来の保険証を持参しても、特例により原則3割負担での受診が可能とされています。
• 期限切れ保険証の扱い: 通常であれば期限切れの保険証は無効ですが、この特例期間においては、柔軟な対応が医療機関に求められています。

この情報は「12月1日期限切れ」の大誤解として報じられており、手元の保険証をすぐに破棄せず、マイナ保険証が利用できない場合のバックアップとして保管しておくことが推奨されます。

マイナ保険証を持たない場合の「資格確認書」

マイナンバーカードを取得していない、あるいは保険証利用登録を行っていない人にとって、従来の保険証が使えなくなることは死活問題です。こうした層に向けて「資格確認書」の発行が進められていますが、ここにも課題があります。

基本的なルールは以下の通りです。

• マイナ保険証未登録者: 申請なしで、加入している健康保険組合等から「資格確認書」が送付されます。
• 受診方法: 医療機関の窓口でこの「資格確認書」を提示すれば、従来通り保険診療が受けられます。

しかし、まだ対応していない人はどうすればいい？という不安の声に対し、資格確認書の送付時期や利用方法に関する周知が十分に行き届いていない現状があります。現場の窓口では「マイナ保険証」または「資格確認書」の提示が基本ルール化されましたが、手元に届いていない等の理由で困惑するケースも見られます。

まとめ

2025年末の健康保険証完全廃止に伴う状況を整理しました。

• 実質的な延長措置: 2026年3月末までは、特例により従来の健康保険証も利用可能なケースがあります。
• 現場の混乱: システムエラーや操作の不慣れにより、窓口でのトラブルは完全には解消されていません。
• 代替手段の確保: マイナ保険証がない場合は「資格確認書」が必須となりますが、届かない場合は加入している保険組合への確認が必要です。

医療制度のデジタル化は、将来的には行政コストの削減や経済効率の向上につながる重要な施策ですが、過渡期においては個人の情報収集と自衛策が求められます。2026年の春に向けて、この移行トラブルがどのように収束していくのか、引き続き注視が必要です。