2025年12月29日、UAE（アラブ首長国連邦）は、この1年間にわたる宇宙開発の目覚ましい成果を総括しました。米国SpaceXや中国との協力による複数の衛星打ち上げ成功に加え、将来の深宇宙探査に向けた重要なマイルストーンを達成しています。これらのプロジェクトは、地球観測や通信インフラの強化だけでなく、科学技術の発展や化学的な地質分析など、多岐にわたる分野での貢献が期待されています。UAEは宇宙分野における国際的なハブとしての地位を確固たるものにしています。

概要

2025年前半の成果：SpaceXとの連携と通信・観測網の強化

2025年の幕開けは、UAEの宇宙開発にとって象徴的なものとなりました。1月4日、フロリダ州ケープカナベラルからSpaceXのFalcon 9ロケットが打ち上げられ、UAEの重要な衛星資産が宇宙へと送られました。

• Thuraya-4 (Thuraya 4-NGS)：YahsatとBayanatが合併して誕生した新会社「Space42」によって運用される次世代通信衛星です。静止トランスファ軌道に投入され、より広範囲で高速な通信サービスの提供を目指します。
• MBZ-SAT：高度な地球観測能力を持つ衛星で、環境モニタリングや都市計画に不可欠な高解像度データを提供します。

さらに、2025年3月にはUAE初のレーダー衛星である「UnionSat」の打ち上げにも成功しました。光学衛星が苦手とする夜間や悪天候下でも地表を観測できるレーダー技術は、災害対応や安全保障の面で科学技術の重要な進歩を意味します。

中国との協力およびアラブ諸国共同プロジェクト「813」

2025年の締めくくりとして注目されたのが、中国との宇宙協力です。12月10日、中国のLijian-1 Y11ロケットにより、アラブ諸国共同の衛星「Arab Satellite 813」が打ち上げられました。

このプロジェクトはUAEが主導し、計11のアラブ諸国が参加する画期的な取り組みです。この衛星にはハイパースペクトルカメラが搭載されており、地表の物質が反射する光のスペクトルを詳細に分析することが可能です。

• 環境監視と資源探査：ハイパースペクトルデータを用いることで、土壌や岩石の成分、農作物の健康状態などを識別できます。これは、対象物の化学的組成を宇宙から特定する技術であり、環境保護や鉱物資源の探査において極めて高い価値を持ちます。
• 国際的な結束：このミッションは、宇宙開発を通じたアラブ諸国の結束を示すとともに、中国とUAEの宇宙分野における関係強化（マイルストーン）を象徴しています。

次世代ミッション：小惑星探査機「MBR Explorer」の進展

地球周回軌道の利用だけでなく、UAEは深宇宙探査への準備も着実に進めています。UAE宇宙庁は、小惑星帯探査ミッション（EMA）におけるクリティカルデザインレビュー（CDR）を完了したと発表しました。

この審査の完了により、探査機「MBR Explorer」の開発フェーズは製造や試験へと移行します。このミッションは、科学的にも極めて野心的な目標を掲げています。

• 7つの小惑星を探査：探査機は複数の小惑星をフライバイ（接近通過）観測し、その表面構造や組成を調査します。
• 小惑星「Justitia」への着陸：ミッションの最終段階では、小惑星Justitiaへの着陸と詳細な観測が計画されています。小惑星の起源や太陽系の形成過程における物質の化学的進化を解明する手がかりが得られる可能性があります。
• 2028年の打ち上げ目標：詳細設計が承認されたことで、2028年の打ち上げに向けたスケジュールがより現実的なものとなりました。

まとめ

2025年は、UAEにとって宇宙開発の歴史に残る「記録的な年」となりました。通信、地球観測、そして深宇宙探査の各分野で具体的な成果を上げ、米国や中国との戦略的なパートナーシップを深化させています。

• 衛星運用の本格化：「Space42」による通信衛星の運用や、高精度な地球観測データの活用が始まります。
• 科学探査の深化：ハイパースペクトル観測や小惑星探査の準備を通じて、科学技術および化学・物理学分野への学術的貢献が加速します。
• 2028年への期待：小惑星探査ミッション（EMA）の進展により、数年後にはさらに高度な宇宙活動が展開される見通しです。