2025年12月17日、第219回臨時国会が閉会しました。高市早苗首相率いる自民・維新連立政権にとって初となるこの国会では、2025年度補正予算やガソリン税の暫定税率廃止など、国民生活と国家の安全に関わる重要な政策が決定されました。世界情勢が不安定化し、戦争や紛争のリスクが懸念される中、外交・安全保障への投資も焦点となりました。一方で、維新との合意事項であった議員定数削減は継続審議となるなど、今後の政治課題も浮き彫りとなっています。

概要

重要法案の成立と「強い経済」への布石

今国会での最大の成果の一つは、政府が提出した11の法案がすべて成立したことです。これにより、高市内閣が掲げる「強い経済」の実現に向けた法的基盤が整いました。

• 2025年度補正予算の成立: 経済対策の柱となる補正予算が成立しました。これにより、物価高騰への対応や成長分野への投資が加速することが期待されます。
• ガソリン税暫定税率の廃止: 特筆すべきは、与野党を超えた6党（自民、維新、立憲、国民、公明、共産）の合意により、ガソリン・軽油引取税の暫定税率を廃止する法律が成立したことです。これは、長年議論されてきた「トリガー条項」などの議論を超え、恒久的な税制の見直しに踏み込んだ画期的な決定と言えます。
• 閣僚給与の適正化: 国会議員から任命される閣僚等が、議員歳費を超える分の給与を受け取らないとする法改正も成立しました。これは政治家自らが身を切る姿勢を示すものであり、国民の政治不信払拭に向けた一歩となります。

これらの法案成立は、高市首相が会見で強調した「経済対策」を具体化するものであり、国民生活の安定に直結する成果と言えるでしょう。

外交・安全保障と危機管理への投資

高市首相は会見において、「強い経済」と並んで「強い外交・安全保障」への方向性を強く示しました。これは、現在の国際情勢を反映した政策判断と言えます。

近年、世界各地で緊張が高まり、大規模な戦争や紛争のリスクが意識される中、日本の安全保障環境も厳しさを増しています。今回成立した補正予算には、こうした危機に対応するための「危機管理投資」が含まれています。

• 外交力の強化: 国際社会での日本のプレゼンスを高め、能動的な外交を展開するための予算が確保されました。
• 安全保障体制の整備: 具体的な装備や戦略の詳細は予算執行の中で明らかになりますが、高まる軍事的な脅威や地政学的なリスクに対応するため、防衛力の抜本的な強化を含む安全保障分野への重点的な配分が意図されています。
• 危機管理への備え: 自然災害だけでなく、有事の際の国民保護やインフラ防衛など、広義の危機管理に対する投資が推進されます。

首相が強調する「危機管理投資」は、単なる装備品の購入にとどまらず、国家としての強靭性を高めるための包括的なアプローチを指しています。これにより、日本が国際社会の中で安定した地位を確保し、国民の生命と財産を守る体制が強化されることが期待されます。

連立政権の運営と残された課題

第219回臨時国会は、高市首相にとって自民・維新連立政権として臨んだ初の国会でした。多くの法案を成立させた実績は、政権運営の安定性をアピールする材料となりますが、一方で課題も残されています。

その象徴的な事例が、衆議院議員定数削減法案の扱いです。

• 定数削減の先送り: 日本維新の会との連立合意における重要項目であった「議員定数削減」法案は、今国会では審議入りに至らず、継続審議となりました。
• 次期国会への持ち越し: この法案は2026年1月に召集される通常国会へ持ち越されることとなりました。維新側にとって譲れない一線であるこの法案の行方は、今後の連立政権の結束に影響を与える可能性があります。

高市首相は会見で成果を強調しましたが、連立パートナーとの調整や、野党との合意形成プロセスにおいては、今後も慎重な舵取りが求められます。特に、定数削減のような政治制度の根幹に関わる改革は、各党の利害が対立しやすいため、次期通常国会での最大の焦点の一つとなるでしょう。

まとめ

2025年12月29日現在、閉会したばかりの第219回臨時国会を振り返ると、高市連立政権による「実行力」と「課題」の双方が見えてきます。

• 成果: 補正予算による経済対策と安全保障強化の始動、およびガソリン税暫定税率廃止という国民負担軽減策の実現。
• 方向性: 「強い経済」「強い外交・安全保障」を掲げ、不安定な世界情勢（戦争リスク等）に対応する危機管理投資の推進。
• 課題: 維新との合意事項である議員定数削減の実現と、連立政権の求心力維持。

2026年1月の通常国会では、先送りされた定数削減問題に加え、成立した予算の執行状況や新たな法案審議を通じて、高市政権の真価が問われることになります。