2025年も残すところあとわずかとなりました。年末年始は多くの人々が芸能特番やスポーツの試合結果、華やかなエンタメ情報に心を躍らせる時期ですが、遠く離れた南極から、私たちの社会にとって科学的にも意義深い重要なニュースが届きました。第67次南極地域観測隊を乗せた南極観測船「しらせ」が、数々の困難を乗り越え、無事に昭和基地沖へと到着したのです。

今年の南極海は氷山の状況が厳しく、一時は接岸が危ぶまれる場面もありましたが、適切な判断と操船技術により、隊員たちは無事に目的地へと辿り着きました。ここでは、その到着の詳細と今後の活動について解説します。

概要

氷山回避の航路変更と「ラミング」20回の記録

今回の「しらせ」の航海は、決して平坦な道のりではありませんでした。南極海では年によって海氷や氷山の状況が大きく異なりますが、2025年は特に氷山の影響が懸念され、一時は接岸が厳しいのではないかという見方もあったほどです。

• 航路の変更: 通常のルート上に氷山などが立ち塞がっていたため、観測隊は例年とは異なる北方へ迂回するルートを選択しました。この慎重な判断が、無事な接岸へと繋がりました。
• ラミング回数: 厚い氷を割って進むために船を一旦後退させてから勢いをつけてぶつかる「ラミング」という動作を、往路で20回実施しました。過去には数千回を要した年もあることを考えると、今回は航路選定が功を奏し、比較的スムーズに定着氷へ到達できたと言えます。

また、当初の計画では往路で実施される予定だったトッテン氷河沖での集中観測については、海氷状況やスケジュールの都合により、復路での実施に変更されています。柔軟な計画変更を行いながら、まずは最優先事項である昭和基地への接岸と物資輸送を成功させた形です。

即座に開始された物資搬入と越冬準備

昭和基地がある東オングル島周辺の定着氷に錨を下ろした直後から、観測隊と「しらせ」乗員による慌ただしい作業が始まっています。南極の短い夏期間中に、1年分の生活物資や観測機器を運び込む必要があるためです。

• 燃料のパイプライン輸送: 接岸したその日の夜（12月27日夜）から、早速燃料の輸送が開始されました。船から基地までホースを展張し、越冬生活や発電に不可欠な燃料を送り込んでいます。
• 物資・食料の搬入: 燃料と並行して、雪上車などを用いた物資の陸揚げも進められています。これから始まる第67次隊の越冬観測を支えるための食料や観測機材などが、次々と昭和基地へと運び込まれています。

基地までの距離が約1,700mという位置に接岸できたことは、これらの輸送作業を行う上で非常に大きなメリットとなります。天候が安定している間に、24時間体制に近い形で集中的な輸送が行われることになります。

まとめ

第67次南極地域観測隊を乗せた「しらせ」の接岸は、日本の科学観測にとって重要なマイルストーンです。

• 2025年12月27日、氷山の影響による懸念を払拭し、昭和基地沖への接岸に成功しました。
• 適切な航路変更と20回のラミングを経て、基地から約1.7kmの地点に到達しています。
• 現在、燃料や食料などの物資搬入が急ピッチで進められており、トッテン氷河の観測は復路で行われる予定です。

年末の日本から遠く離れた極地で、隊員たちは新たな発見と観測の継続のために奮闘しています。無事に物資を届け、観測体制を整えた後の研究成果にも期待が高まります。