2025年10月に閉幕した大阪・関西万博に関する政府の検証会合が行われ、経済波及効果が当初の想定を大きく上回る約3.6兆円に達したことが明らかになりました。不安定な国際情勢下において戦争や紛争のリスクが懸念される中、平和と「いのちの輝き」をテーマに掲げた本万博は、各国の要人が集う外交の舞台としても機能しました。国会や政治の場でも議論が重ねられてきた本プロジェクトは、運営収支でも大幅な黒字を確保する見通しとなり、今後はその余剰金を活用したレガシー継承や、次なる政策課題であるIR（統合型リゾート）開業へ向けた動きが加速します。

概要

インバウンド消費の拡大と地域間格差の課題

今回の万博における経済効果の大きな要因として、外国人来場者による旺盛な消費活動が挙げられます。データに基づくと、以下のような特徴的な傾向が見られました。

• 万博に来場した外国人客数は約156万人を記録。
• 来場外国人の消費単価は39万円となり、全国平均の21.7万円を大きく上回る結果となった。
• 万博期間中の大阪市内におけるインバウンド消費額は、前年同期比で28%増の5037億円に達した。

特に富裕層を含む外国人観光客が、万博をきっかけに日本へ長期滞在し、高額な消費を行ったことが全体の数字を押し上げたと分析されています。これは、観光立国推進を掲げる政府の政策とも合致する成果と言えるでしょう。

一方で、経済波及効果の恩恵には「地域差」という課題も浮き彫りになりました。会場へのアクセス拠点となる大阪メトロ中央線沿線では消費額が65%増と突出した伸びを見せたものの、会場から離れた地域や特定の路線周辺では、その効果が限定的であったことも報告されています。地域全体へ均等に効果を行き渡らせることは難しく、今後のインバウンド戦略においては、特定の観光地への集中（オーバーツーリズム）を避けつつ、いかに周辺地域へ誘客を図るかが、地方自治体や政治家に求められる課題となります。

「万博レガシー」の継承と夢洲第2期区域の開発

万博閉幕後の焦点は、会場となった夢洲（ゆめしま）の跡地活用に移っています。大阪市が公表した計画によると、万博跡地（夢洲第2期区域）は「万博の理念を継承したまちづくり」が進められる予定です。

• 会場のシンボルであった世界最大級の木造建築「大屋根リング」や「静けさの森」などは一部保存され、活用される。
• 運営収支の黒字分（最大370億円）が、これらの維持管理やレガシー継承の原資として充てられる方針。
• 2025年度後半には跡地開発の事業者が募集され、本格的なまちづくりが始動する。

特に注目されるのは、2030年秋に同地区で開業が予定されているIR（統合型リゾート）との連携です。万博跡地の開発は、IR開業を見据えた一体的なエリア整備として構想されています。かつて国会でも激しい議論を呼んだIR法案ですが、万博の成功を弾みに、エンターテインメントやMICE（国際会議・展示会）機能を集積させた国際観光拠点の形成が現実味を帯びてきました。

また、軍事的な緊張や分断が懸念される国際社会において、万博会場跡地が引き続き国際交流の場として機能することは、平和発信の観点からも意義深いものとなります。ハード面（建物）の保存だけでなく、ソフト面（理念や交流）をどのように次世代へつなげていくか、行政の手腕が問われています。

まとめ

大阪・関西万博の事後検証により、3.6兆円という巨大な経済波及効果と、運営収支の黒字化が確認されました。これは事前の懸念を払拭するポジティブな結果であり、以下の点が今後の重要なポイントとなります。

• インバウンド戦略の成功：外国人来場者の高い消費単価が経済を牽引したが、地域への波及効果にはばらつきが残った。
• 黒字分の活用：約370億円の黒字は「大屋根リング」などのレガシー保存に投資され、負の遺産化を防ぐ。
• 次なる開発フェーズ：夢洲は2030年のIR開業に向け、万博の理念を継承した新たな国際拠点へと変貌を遂げる。

万博という一大プロジェクトは、閉幕をもって終了するのではなく、その成果をいかにして将来の成長につなげるかという新たなステージに入りました。今後も夢洲の開発動向や、それを取り巻く経済・政治情勢から目が離せません。