2025年12月29日、日本の政治と安全保障政策において大きな転換点となるニュースが飛び込んできました。政府は2025年度補正予算案において、防衛省計上分と他省庁の関連経費を合わせ、総額約1.1兆円規模の防衛関連費を盛り込むことを決定しました。これにより、政府が国際公約として掲げてきた「防衛費対GDP比2％」という目標が、当初の計画よりも2年早く達成される見通しとなりました。厳しさを増す国際情勢や戦争のリスク、そして米国の要請といった外交・軍事的な背景が、今回の予算編成を強く後押しした形です。年明けの国会でも大きな論点となることが予想されるこの補正予算について、その詳細と影響を解説します。

概要

予算の重点配分：米軍再編と人的基盤の強化

今回の補正予算で特筆すべきは、その使い道がハードウェア（正面装備）だけでなく、同盟国との連携基盤や自衛隊員そのものに向けられている点です。情報源によると、以下の項目に重点的に予算が配分されています。

• 米軍再編関連経費：総額3451億円が計上されました。これには、馬毛島（鹿児島県）における自衛隊基地建設および米空母艦載機の離着陸訓練（FCLP）移転費用として2751億円、沖縄県辺野古の新基地建設に関連する経費として534億円が含まれています。
• 人的基盤の強化：自衛官の処遇改善や、老朽化した隊舎の整備など、隊員の生活・勤務環境を改善するための費用が盛り込まれました。少子化で採用環境が厳しくなる中、人材確保は喫緊の軍事的課題となっています。

特に米軍再編事業への多額の計上は、日米同盟の抑止力を高めると同時に、基地負担軽減や運用体制の確立を急ぐ狙いがあります。馬毛島の整備は、南西諸島防衛の要としても位置づけられており、政治的な優先度の高さが窺えます。

現代戦への対応：ドローン対処と継戦能力

近年の戦争や紛争、特にウクライナ情勢などから得られた教訓も、今回の予算編成に色濃く反映されています。従来の大型装備品に加え、新しい戦い方への適応が進められています。

• ドローン対処能力の向上：小型無人機（ドローン）の脅威に対抗するための機材調達に29億円が計上されました。安価なドローンが戦局を左右する現状に対応するため、防御能力の強化が急務とされています。
• 弾薬の確保と継戦能力：有事の際に戦闘を継続するための「継戦能力」を担保するため、弾薬の確保に566億円が充てられます。
• 既存装備の強化：護衛艦や潜水艦の建造費用の一部も盛り込まれ、海上優勢の確保に向けた取り組みも継続されています。

これらの予算は、単に兵器を買うだけでなく、実際に有事が起きた際に機能し続けるための「足腰」を鍛えるものと言えます。特に弾薬不足は以前から国会でも指摘されてきた課題であり、補正予算を活用して在庫の積み増しを図る狙いがあります。

「対GDP比2％」前倒し達成の背景と影響

「防衛費対GDP比2％」という数字は、NATO（北大西洋条約機構）加盟国の目標水準であり、日本政府にとっても国際的なスタンダードに合わせるための重要な指標でした。当初は2027年度の達成を目指していましたが、今回の補正予算計上により2025年度での達成が見込まれます。

この背景には、以下の要因が考えられます。

• 安全保障環境の悪化：周辺国による軍事活動の活発化やミサイル技術の向上など、日本を取り巻く環境が予測以上のスピードで厳しさを増していること。
• 対米公約と外交：米国からの防衛費増額要請や、日米同盟の強化を確認した首脳会談などを受け、日本側が具体的な行動（予算措置）で応える必要があったこと。
• 円安や物価高の影響：装備品の調達コストが上昇しており、予算規模自体を拡大しなければ実質的な防衛力を維持・強化できないという事情。

この前倒し達成は、日本の防衛姿勢を内外に示す強いメッセージとなりますが、一方で財源の確保や財政規律との兼ね合いについては、今後の政治課題として議論が続くことになるでしょう。

まとめ

2025年度補正予算における防衛関連費1.1兆円の計上は、日本の安全保障政策における大きな転換点を象徴しています。

• 防衛費対GDP比2％目標が、計画より2年前倒しで達成される見通しとなりました。
• 予算の中身は、米軍再編事業（馬毛島・辺野古）や人的基盤の強化、ドローン対処など、即応性と持続性を重視した内容となっています。
• 今後は、確保された予算が効果的に執行されるか、また増額分に見合う防衛力の向上が実現できているかが、国会や国民による監視の焦点となります。

急速に進む防衛力強化の動きは、地域の安定に寄与することが期待される一方で、恒久的な財源確保の議論も含め、私たち国民一人ひとりが注視すべき重要なテーマです。