2025年11月、南アフリカのヨハネスブルクにおいて、アフリカ大陸初となるG20サミットが開催されました。2025年12月29日現在、このサミットが示した国際的なパワーバランスの変化について、多くの分析がなされています。世界各地で続く戦争や紛争により分断が深まる中、これまでの欧米主導の政治体制から、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が主導権を握る多極化への移行が鮮明となりました。日本の高市早苗首相は、この複雑な外交環境において、同年8月に横浜で開催されたTICAD 9（第9回アフリカ開発会議）の成果を背景に、実務的な連携を強化する姿勢を打ち出しています。本記事では、G20サミットの成果と、今後の国際社会における日本の役割について詳細に解説します。

概要

グローバルサウスの台頭とG7の求心力低下

今回のG20サミット最大の特徴は、議長国である南アフリカが主導し、グローバルサウスが抱える課題を全面的に押し出した点にあります。

• 米大統領の欠席が与えた衝撃: トランプ米大統領の欠席は、多国間協調よりも自国優先主義を重視する姿勢として受け止められ、G20という枠組み自体の求心力低下を国際社会に印象付けました。これは、西側諸国が主導してきた既存の国際秩序に対する信頼を揺るがす事態となっています。
• 新興国の優先課題が中心に: ラマポーザ大統領は、途上国の重荷となっている「債務問題」や「不平等の是正」を議題の中心に据えました。これにより、これまでのサミットで見られた欧米中心の政治・経済アジェンダから、グローバルサウスの生活と成長に直結する課題へと議論の重心がシフトしました。
• 多極化する世界秩序: 一部の主要国首脳が不在の中で首脳宣言の採択に漕ぎ着けた事実は、G7の合意がなくとも世界の意思決定が進み得るという、新たな多極化時代の到来を示唆しています。

日本の外交戦略：TICAD 9からの連続性と重要鉱物

G7の結束が問われる中、日本の高市首相はTICAD 9（2025年8月・横浜）での成果をテコに、アフリカ諸国との実利的な関係強化を図る独自の外交を展開しました。単なる援助にとどまらず、相互の利益となる経済安全保障分野での協力が強調されています。

• 重要鉱物のサプライチェーン強靱化: 高市首相は、EV（電気自動車）や半導体産業に不可欠な重要鉱物の供給網強化を表明しました。これは、特定の国への依存度を下げるための経済安全保障上の重要施策であり、現代においては軍事的な防衛力と同等に重要な意味を持ちます。
• 防災分野での知見共有: 日本が持つ災害対策の技術やノウハウを共有することで、気候変動に脆弱なアフリカ諸国の強靱化に貢献する姿勢を示しました。これは、政治的な対立が生じにくい分野での「日本らしい」貢献と言えます。
• 産業化と持続可能な成長: アフリカ自身の産業育成を支援することで、一方的な資源収奪ではなく、パートナーとしての対等な関係構築を目指す日本の政策が、グローバルサウス諸国から一定の評価を得ています。

ビジネスと経済協力の最前線

政治レベルでの対話と並行して、ビジネス界でも活発な動きが見られました。G20に合わせて開催されたB20（ビジネスサミット）では、日本企業がアフリカ市場へのコミットメントをアピールしました。

特に注目されたのは、インフラ投資と技術協力の分野です。アフリカの人口増加に伴うエネルギー需要や食料需要に対し、日本のクリーンエネルギー技術や農業技術が解決策として提示されました。首脳宣言で合意された「クリーンエネルギーへの資金動員」は、日本企業にとってもアフリカ進出の追い風となると期待されます。今後は、政府によるODA（政府開発援助）と民間投資を組み合わせたハイブリッドな支援モデルが、アフリカビジネスの主流となっていくでしょう。

まとめ

2025年の南アフリカG20サミットは、米国の不在とグローバルサウスの台頭により、国際秩序の構造変化を決定づける歴史的な会議となりました。

• 分断の中での日本の立ち位置: 日本は、G7としての立場とアジア・アフリカとの紐帯を持つ独自の立場を活かし、現実的な利益共有に基づく関係構築を進めています。
• 国内政治への波及: 今回の高市首相の外交成果や、重要鉱物確保に向けた具体的な取り組みは、次期国会においても主要な論点となるでしょう。
• 今後の展望: 欧米主導のルール作りが限界を迎える中、日本がいかにしてグローバルサウスと協調し、新しい国際ルールの形成に関与できるかが、今後の日本の国益を左右することになります。