2025年12月29日、クラウド印刷ソリューションのリーダーであるCeliveoは、同社の主力製品「Celiveo 365」の大規模なアップデートを発表しました。今回の更新では、Lexmarkの最新IoT機器である9シリーズおよび8シリーズへの完全対応が実現されています。特に注目すべきは、AI技術を活用した高度なデータ損失防止（DLP）機能の搭載です。これにより、企業は複雑なプログラミングや追加のハードウェアを導入することなく、セキュアな印刷環境を構築可能となります。本記事では、この最新ソフトウェアアップデートがもたらすITインフラへの影響と、企業のセキュリティ対策における意義について詳しく解説します。

概要

AI技術によるセキュリティとデータ保護の強化

今回のCeliveo 365のアップデートにおいて、最も技術的に注目すべき点は、AI技術を駆使したデータ損失防止（DLP）機能の強化です。現代の企業活動において、紙媒体からの情報漏洩は依然として重大なリスク要因の一つです。Celiveo 365は以下の機能により、この課題に対処しています。

• リアルタイムコンテンツ分析: 印刷ジョブが実行される際、AIエンジンがドキュメントの内容を即座に解析します。
• PIIおよびPHIの検出: 個人識別情報（PII）や保護対象保健情報（PHI）などの機密データが含まれている場合、システムがそれを検知し、必要に応じて印刷をブロックまたは警告します。
• コンプライアンスの遵守: これにより、医療機関や金融機関など、厳格なデータ管理が求められる業界でも、安全にクラウド印刷を利用することが可能になります。

従来、こうした高度なセキュリティ機能を実装するには、複雑な開発ツールを用いたカスタマイズや、高価な専用アプライアンスが必要でした。しかし、Celiveo 365はSaaS（Software as a Service）としてこの機能を提供するため、ユーザーは手軽に最新のセキュリティ技術を享受できます。ソフトウェア側で高度な処理を行うことで、プリンター自体に過度な負荷をかけず、スムーズな印刷体験とセキュリティの両立を実現しているのです。

Lexmark最新デバイスとの統合によるITインフラの刷新

Celiveo 365が新たに対応したLexmarkの9シリーズおよび8シリーズは、単なるプリンターではなく、高度なIoT機能を備えたインテリジェントデバイスです。これらの機器とCeliveo 365の組み合わせは、企業のITインフラに以下のようなメリットをもたらします。

• 完全なサーバーレス環境: Celiveo 365はMicrosoft Universal Printと統合されており、ローカルのプリントサーバーやドメインコントローラーを必要としません。これにより、サーバーの維持管理コストや、関連するプログラミングやスクリプト作成の手間が不要になります。
• Lexmark eSFとの連携: Lexmarkのプリンターには「eSF（Embedded Solutions Framework）」という組み込みソリューションフレームワークが搭載されています。Celiveoのインテリジェントエージェントはこの基盤上で直接動作し、プリンターの操作パネルを使って、Azureベースのクラウド認証（バッジ、PIN、スマートフォン）を行うことができます。
• 環境負荷の低減: Lexmarkの9シリーズおよび8シリーズは、長寿命設計（7年以上）や再生素材の使用、ENERGY STAR基準を超える省エネ性能を特徴としています。クラウド印刷による無駄な印刷の削減と合わせ、企業のサステナビリティ目標の達成に寄与します。

特にLexmark 9シリーズはA3対応の高性能機でありながら、汎用性が高く、8シリーズは省スペースなA4機として設計されています。これらのラインナップがCeliveoのクラウドソリューションで一元管理できるようになったことは、オフィス環境の最適化を目指す企業にとって大きな利点です。

管理コンソールによる運用効率の向上

Celiveo 365の導入効果は、エンドユーザーの利便性向上だけでなく、管理者側の負担軽減にも表れます。ウェブベースの管理ポータルを利用することで、複雑なコマンド操作やプログラミング知識なしに、大規模な印刷環境を制御できます。

主な管理機能としての特徴は以下の通りです。

• ドライバーレス印刷: ユーザーのPCに個別のプリンタードライバーをインストールする必要がありません。これにより、OSのアップデートに伴うドライバーの不具合や配布の手間から解放されます。
• ゼロトラストセキュリティ: ユーザー認証はAzure Active Directory（Entra ID）などのクラウドIDプロバイダーと連携し、厳格なアクセス制御を実現します。印刷データは端末からプリンターへ直接、暗号化されて送信されるため、クラウド上にデータが残るリスクもありません。
• プルプリント機能: ユーザーはネットワーク上のどのプリンターからでも、認証後に自身のドキュメントを出力できます（Follow-Me Printing）。これは印刷物の取り忘れ防止にもつながります。

このように、Celiveo 365は単なる印刷ツールではなく、企業のデジタルトランスフォーメーションを支える重要なITインフラの一部として機能します。Lexmarkの堅牢なハードウェアとCeliveoの柔軟なソフトウェアが融合することで、管理者はより戦略的な業務に集中できるようになるでしょう。

まとめ

2025年12月29日に発表されたCeliveo 365のアップデートは、Lexmarkの最新9/8シリーズへの対応と、AI技術によるセキュリティ強化という二つの大きな柱で構成されています。このニュースは、以下の点で企業にとって重要な意味を持ちます。

• セキュリティの高度化: AIによるリアルタイムスキャンで、個人情報や機密情報の漏洩リスクを大幅に低減。
• 運用の簡素化: サーバーレス、ドライバーレスのアプローチにより、IT部門の管理負担とコストを削減。
• 最新ハードウェアの活用: Lexmarkの環境配慮型IoTプリンターの性能を最大限に引き出すクラウド環境の提供。

今後、オフィスワークのクラウド化が進む中で、物理的な紙媒体とデジタルデータの接点である「印刷」のセキュリティはますます重要になります。Celiveo 365のような、AI技術とクラウドを融合させたソリューションは、次世代のオフィス環境における標準的なインフラとなっていくことが予想されます。