2025年12月28日、ロシアのラブロフ外相はタス通信とのインタビューにおいて、台湾有事が発生した際にロシアが中国を支援する用意があることを公式に表明しました。この発言は、日米欧との緊張関係が続く中、中ロ両国の軍事・外交面での連携がかつてないほど強固になっていることを示しています。

ラブロフ氏は、中国の領土保全を支持する法的根拠として2001年の条約に言及し、台湾問題を中国の内政問題と断定しました。さらに、日本の高市早苗首相（記事時点）が進める防衛政策を名指しで批判し、アジア太平洋地域における日本の動きを強く牽制しています。このニュースは、今後の日本の政治や政策運営、そして国際社会における戦争リスクの認識に大きな影響を与える可能性があります。

概要

「中ロ善隣友好条約」を根拠とした支援義務の強調

ラブロフ外相が今回のインタビューで最も強調したのは、2001年に署名された中ロ善隣友好条約の存在とその解釈についてです。彼は、この条約が単なる友好の印ではなく、有事における具体的な行動指針を含むものであるとの認識を示しました。

• 領土保全の相互支援: ラブロフ氏は、条約に基づき、ロシアと中国は互いの主権と領土保全を守る義務があると述べました。これは、中国が台湾を自国の領土の一部とみなしている以上、台湾統一に向けた中国の行動をロシアが支援することは、条約上の「義務」であるという論理です。
• 台湾独立への反対: インタビューの中でラブロフ氏は、中国による台湾への主権主張を全面的に支持し、台湾の独立にはいかなる形であれ反対する立場を再確認しました。
• 支援の具体性: 「台湾有事（Taiwan contingency）」という具体的なシナリオに言及し、事態が悪化（flare up）した場合の支援を明言したことは、従来の外交的な支持を超えた、より踏み込んだコミットメントを示唆しています。

これまでロシアは台湾問題に関して中国の立場を支持してきましたが、条約上の義務として「有事支援」をここまで明確に公言するのは異例のことです。これは、中ロ関係が事実上の準軍事同盟に近いレベルまで深化していることを国際社会に誇示する動きと捉えられます。

日本の高市政権に対する「軍事化」批判と牽制

今回のラブロフ外相の発言において、もう一つの重要なポイントは日本に対する激しい批判です。特に、記事時点で日本の首相を務める高市早苗氏の政権運営に対して、ロシア側が強い警戒感を持っていることが明らかになりました。

ラブロフ外相は以下の点について言及し、日本を批判しました。

• 防衛費増額と軍事化: 高市政権が進める防衛力の抜本的強化や防衛費の増額について、ロシアはこれを「軍事化の加速」と捉え、地域の不安定要因であると批判しました。
• 対日警告: 日本が米国と連携して台湾問題に関与を深めている現状に対し、ラブロフ氏はこれを強く牽制しました。台湾問題への介入はロシアとの対立も招く可能性があるという、明確な「対日警告」としてのメッセージが含まれています。
• 日中関係への言及: 日中関係の緊張が高まる中で、ロシアがあえて中国の立場を擁護し日本を批判したことは、中ロが連携して日本に対抗する構図を鮮明にするものです。

この発言は、日本の政治において安全保障政策が重要課題となる中、政府の判断や国会での議論にも心理的な圧力をかける可能性があります。ロシアとしては、日本がこれ以上米国の対中戦略に同調しないよう、強い言葉で釘を刺した形です。

国際情勢の悪化と戦争リスクへの懸念

ラブロフ外相の発言は、台湾海峡を取り巻く国際的な緊張関係の中で行われました。米国や台湾当局からは、中国による武力侵攻のリスクに対する警告が相次いでおり、今回のロシアの表明はそうした懸念を裏付ける形となりました。

• 米国の警告への対抗: 米国等が発する紛争リスクへの警告に対し、ロシアは中国の「国家統一」を正当な権利として擁護することで、西側諸国の圧力を無効化しようとしています。
• 紛争の拡大リスク: もし台湾海峡で戦争や紛争が勃発した場合、ロシアが中国を支援することで、紛争が地域レベルを超えて拡大する恐れがあります。ラブロフ氏の発言は、そのようなシナリオが現実に起こり得ることを示唆しています。

ロシアによるこのような公然とした支援表明は、中国にとっては台湾統一に向けた大きな後ろ盾となりますが、同時に地域諸国にとっては安全保障上の重大な脅威となります。

まとめ

2025年12月28日のラブロフ外相による発言は、台湾有事におけるロシアの立ち位置を明確にする歴史的な転換点となりました。

• ロシアは中ロ善隣友好条約を根拠に、台湾有事での中国支援を「義務」と位置づけました。
• 日本の高市早苗首相が進める防衛政策を強く批判し、台湾問題への介入に対して警告を発しました。
• この動きは、中ロの軍事・外交連携が極めて高いレベルにあることを示しており、アジア太平洋地域の外交バランスや安全保障環境に深刻な影響を与えることが予想されます。

今後、日本政府はこの新たな脅威認識に基づき、高度な政治判断と外交努力を迫られることになるでしょう。