この合意は、物理的な戦闘を直ちに止めることを最優先とした緊急措置です。国境地帯での直接会談という形式は、両国の指導層が事態の沈静化に向けた強い政策的意思を持っていることを示しています。特に、軍事目標だけでなく民間施設への攻撃禁止を明文化したことは、被害の拡大を防ぐための不可欠な措置であり、現地の緊張緩和に向けた第一歩となります。

短期間でこれほどの犠牲者と避難民が出たことは、今回の衝突がいかに激しいものであったかを物語っています。大規模な避難民の発生は、両国の地方自治体や人道支援組織にとって大きな負担となっており、戦闘停止後も生活再建や帰還支援という長期的な課題が残ります。この人道的危機が、国際社会による早期停戦への圧力を高める要因となりました。

相互不信が根強い中で停戦を維持するため、第三者機関であるASEANの介入を受け入れた点が重要です。72時間という具体的な期間設定は、偶発的な衝突再発を防ぐための冷却期間として機能します。また、部隊配置の凍結は、一方が軍事的に有利な位置を確保しようとする動きを封じ、現状のままで戦闘を停止させるための現実的な妥協案と言えます。

捕虜の返還を停戦遵守の「見返り」として条件付けたことは、カンボジア側に対し合意を守らせる強力なインセンティブとなります。また、地雷除去への言及は、単なる戦闘停止にとどまらず、将来的な住民の安全と国境地帯の正常化を見据えた措置です。これらの段階的な信頼醸成措置が、恒久的な平和への足掛かりとなることが期待されます。

一度停戦が破綻しているという事実は、この問題の解決がいかに困難であるかを示しています。米国やASEAN議長国経験のあるマレーシアなど、多方面からの外交的働きかけがあったことは、この地域紛争が国際的な安全保障上の懸念事項となっていたことを裏付けています。外部からの関与が、両国を交渉のテーブルに着かせる後押しとなりました。