ソニー・ホンダモビリティのEV「AFEELA」がいよいよ路上へ。CES 2025での予約開始から1年、2026年のデリバリーを目前に控え、その真価が問われています。注目すべきは加速性能や航続距離ではありません。
それは、車がAIによって「人格」を持ち、人間と対話する「パートナー」へと進化した点にあります。単なる移動手段を超え、物理的な身体を持った知能として振る舞うAFEELA。これは、私たちの生活空間におけるAIインターフェース競争の幕開けを告げる象徴的な出来事なのです。
クルマが「人格」を持つ日は来たか

ついにAFEELAが動き出すね。車が「知能身体」になる時代の到来だよ。
知能身体? 普通の自動運転車とは何が違うんですか?
ただ走るだけじゃないんだ。人間を理解し、共感するんだよ。
えっ、車が共感? ナビが話しかけてくるのとは違うんですか?
もっと深いよ。AIが君の好みを学習して、車外とも対話するんだ。
車外とも? まるで生き物みたいですね。
そう、まさに「パートナー」としての車だね。
- CES 2025での予約開始を経て、2026年春の北米デリバリーがいよいよ目前に。
- 車外に向けて情報を表示する「Media Bar」を搭載し、外部とのコミュニケーションを実現。
- AIエージェントがドライバーの文脈を読み取り、自然な対話を行うパーソナライズ機能を実装。
- 移動性能(EV)よりも、知能化による「体験価値」の創出に重点を置いた戦略。
モビリティ3.0を読み解く補助線

| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 知能身体 | 物理的な体を持ち、環境と作用する知能。 ロボットや高度なEVを指す。 |
| SDV | ソフトウェアが主役の車両設計。 購入後も機能がアップデートされる。 |
| Media Bar | 車体の外側に付いたディスプレイ。 歩行者や他の車と意思疎通する。 |
| エンボディードAI | 物理世界で身体性を持って活動するAI。 画面の中だけでなく実体がある。 |
| HMI | 人と機械の接点のこと。 AFEELAでは対話やジェスチャーが含まれる。 |
| LLM | 大規模言語モデル。 人間のような自然な言葉で会話するためのAI技術。 |
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なぜソニーはホンダと手を組んだのか

でも、なぜソニーがわざわざ車を作ろうと思ったんでしょう?
家電やスマホの市場はもう飽和しているからね。
なるほど。で、車ならまだチャンスがあると?
そう。でもテスラやBYDと同じ土俵じゃ勝てないよ。
確かに。安さや電池性能なら中国メーカーが強そうです。
だから「移動するエンタメ空間」を作ることにしたんだ。
そこでホンダの車作りの技術が必要だったんですね。
その通り。ITと自動車、互いの強みを掛け合わせたんだよ。
EV市場は現在、激しい価格競争とスペック競争の真っ只中にあります。しかし、ソニー・ホンダモビリティは、この「レッドオーシャン」を避け、移動の時間そのものを価値に変える戦略を採りました。ソニーの持つセンサー技術やエンターテインメント資産と、ホンダの車両製造ノウハウを融合させることで、既存の自動車メーカーには真似できない「高付加価値な体験」を提供しようとしています。
移動手段から「パートナー」への進化

今回の核心は、車を「道具」から「パートナー」に変えた点だ。
パートナーって、具体的にはどういう関係になるんですか?
例えば、君が疲れていたら、それを察して照明や音楽を変える。
気が利く執事みたい! でも、それってAIですよね?
そう。LLMを使って、文脈を理解した会話もできるんだ。
へえ、ただの命令じゃなくて、相談もできちゃうんだ。
さらに「Media Bar」で、充電状況や挨拶を外に見せるんだよ。
車が周りの人に挨拶するの? すごく未来的!
AFEELAが提示するのは、自動車の再定義です。これまでの車は、ドライバーの操作に忠実に従う「機械」でした。しかし、高度なAIエージェントを搭載することで、ユーザーの意図を汲み取り、時には先回りして提案を行う「能動的な存在」へと変化します。特に外部に向けられた「Media Bar」は、車が閉じた空間ではなく、社会とコミュニケーションを取るインターフェースになることを示唆しています。
利便性の裏に潜む「心」のリスク

でも、車が賢くなりすぎると、ちょっと怖くないですか?
おっと、いい視点だね。何が怖いと思う?
プライバシーとか。車内での会話、全部聞かれてますよね。
その通り。データがどう使われるかは重要な問題だね。
それに、車に愛着が湧きすぎたら、買い替えにくそう。
ペットロスならぬ「愛車ロス」か。面白い懸念だね。
この「知能身体」という概念は、見る角度によって全く異なる評価になります。
- ビジネスの視点:サブスクリプションや車内コンテンツ課金など、販売後も収益を生む「リカーリングモデル」の確立が期待できます。車は単なるハードウェアではなく、サービスを届けるプラットフォームになります。
- 倫理的な視点:AIがユーザーの感情に深く寄り添うことで、過度な依存や、商業的な誘導(特定の店へ誘導するなど)が行われるリスクがあります。「操作される同意」という懸念が生じます。
- 技術者の視点:物理的な動作と言語モデルを統合するエンボディードAIの実験場として、自動運転技術のその先を見据えた重要なマイルストーンとなります。
物理空間すべてがインターフェースへ

この技術、車だけで終わると思うかい?
えっ? 他にも広がるってことですか?
考えてごらん。家や家電も「知能身体」になったら?
家が話しかけてきたり、玄関が挨拶したり…?
そう。物理空間全体が、巨大なスマホみたいになるかもね。
便利だけど、逃げ場がない気もしますね…。
だからこそ、人間とAIの距離感が問われるんだよ。
AFEELAの試みは、自動車産業にとどまりません。これは、物理空間におけるAIの振る舞いを決めるための壮大な実験です。もしこの「対話する身体」が受け入れられれば、都市のインフラや家庭用ロボットなど、あらゆる物理デバイスが人格化され、私たちとコミュニケーションを取り始めるでしょう。それは、インターネットが画面の中から飛び出し、現実世界を覆い尽くす未来を意味します。
「知能身体」と共に生きる時代の幕開け

AFEELAは、単なる新型EVではありません。それは、私たちが機械とどう関わり、どう共生していくかという問いに対する、ソニー・ホンダからの回答です。移動の道具が「理解者」へと変わる時、私たちの生活様式や価値観もまた、大きくアップデートされることになるでしょう。