この記事の要約
- 金正恩総書記がプーチン大統領へ「無条件の支持」を表明し、ロ朝の結束を誇示
- トランプ次期政権の発足を目前に控え、対米交渉力を高めるための地政学的布石
- 単なる兵器供与を超え、ユーラシア大陸における「権威主義陣営」の軍事一体化が加速
北朝鮮の金正恩総書記がロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナ侵攻を含むロシアの政策への「無条件の支持」を書簡で表明しました。これは単なる外交辞令ではありません。2026年1月、トランプ次期大統領の就任式を目前に控えたこのタイミングでの発表は、「中露朝」という権威主義ブロックの結束を西側諸国に見せつける強烈なメッセージです。
ウクライナ戦争が長期化する中、アジアと欧州の安全保障環境がかつてないほどリンクし始めています。このニュースは、日本の安全保障にも直結する重大なシグナルを含んでいます。なぜ今、「無条件」という強い言葉が使われたのか。その背景にある冷徹な計算と、今後の世界情勢への影響を深掘りします。
「無条件」という言葉の重み

さて、今回のニュースだけど、金正恩総書記がプーチン大統領に送った「無条件の支持」という言葉、どう感じるかな?
うーん、外交の言葉にしては、すごく極端というか、後戻りできないような激しさを感じます。「無条件」って言い切っていいんですか?
鋭いね。外交の世界では、普通は「含み」を持たせるものなんだ。でも今回はあえて退路を断つような表現を使っている。ここにこのニュースの本質があるんだよ。
なるほど。つまり、北朝鮮はロシアと「運命を共にする」と宣言したようなものなんですね。でも、どうしてそこまで?
そこが重要だね。これは単に「仲が良い」アピールじゃなくて、トランプ次期政権への先制攻撃とも言える意思表示なんだ。詳しく見ていこうか。
このニュースの要点は以下の通りです。
- 異例の「無条件支持」表明
金正恩総書記は書簡で、ロシアのウクライナでの軍事行動を全面的に肯定。「聖戦」という表現を用い、ロシアの勝利を疑わない姿勢を強調しました。 - トランプ政権発足直前のタイミング
2026年1月20日のトランプ大統領就任式を前に、「我々の結束は揺るがない」と米国を牽制する狙いがあります。 - 軍事協力の質的深化
従来の砲弾供給に加え、弾道ミサイルや技術者の派遣など、より直接的な軍事関与が進んでいることが示唆されています。 - 「有事の自動介入」の現実味
2024年に結ばれた「包括的戦略的パートナーシップ条約」の実効性が、この発言によって裏付けられた形です。
ニュースを読み解くキーワード

| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 包括的戦略的パートナーシップ条約 | 2024年にロ朝間で締結された条約。 一方が攻撃された際の相互支援を定める。 |
| 中露朝トライアングル | 中国、ロシア、北朝鮮の連携関係。 対米戦略で利害が一致する権威主義陣営。 |
| 非対称戦力 | 核やサイバー攻撃など特殊な戦力。 通常戦力の劣勢を覆すために用いられる。 |
| トランプ・リスク | トランプ氏の予測不能な外交方針。 同盟軽視やディール外交による混乱を指す。 |
| 消耗戦(アトリッション・ウォー) | 相手の資源を枯渇させる戦い方。 ウクライナ戦線でロシアが採用する戦略。 |
| 軍事技術移転 | 兵器開発のノウハウ提供。 北朝鮮はロシアからミサイル・衛星技術を狙う。 |
| グローバル・サウス | 新興・途上国の総称。 中露は欧米に対抗するため、この層の取り込みを図る。 |
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なぜ今、結束を急ぐのか

そもそも北朝鮮って、世界から孤立していますよね? ロシアとここまでベッタリになっても大丈夫なんでしょうか。
実はね、今の北朝鮮にとってロシアは「唯一の頼れる後援者」になりつつあるんだ。かつての後ろ盾だった中国との関係が微妙に変化しているからね。
えっ、中国と北朝鮮は仲良しだと思っていました。違うんですか?
表面的にはね。でも中国は経済を重視したいから、あまりに暴走する北朝鮮やロシアとは少し距離を置きたい本音もある。そこで北朝鮮は「ロシアという新しいカード」を最大限に利用しようとしているんだよ。
なるほど! 中国への当てつけでもあるんですね。じゃあ、ロシア側にとってのメリットは何ですか?
ロシアはウクライナでの消耗戦で、とにかく「質より量」の弾薬が欲しい。北朝鮮の生産能力は喉から手が出るほど必要なんだよ。
ロシアと北朝鮮の急接近には、明確な「Win-Win」の構造があります。
まずロシア側の事情です。ウクライナ侵攻が4年近く続き、ロシア軍は慢性的な弾薬不足に悩まされています。ハイテク兵器も重要ですが、泥沼の消耗戦では安価で大量の砲弾が戦況を左右します。北朝鮮は冷戦時代の規格に合う砲弾を数百万発単位で備蓄・生産できる、世界でも稀有な供給源なのです。
一方、北朝鮮側の事情はより切実です。長年の経済制裁で疲弊する中、ロシアからの食料、エネルギー、そして何より「高度な軍事技術」の提供は、体制維持の生命線です。特に、偵察衛星や原子力潜水艦の技術は、自力開発が困難だった分野です。プーチン大統領への「無条件支持」は、これらの見返りを確実に引き出すための「忠誠心の証明」と言えるでしょう。
さらに、2026年という時点において、両国は「トランプ政権との取引」を有利に進めるために、自分たちの価値を吊り上げる必要がありました。「我々は結束しており、簡単には崩せない」と見せつけることで、米国からの譲歩を引き出そうとしているのです。
兵器供与を超えた「運命共同体」へ

単に物を売り買いする関係ならビジネスですけど、「無条件支持」ってなると、一緒に戦争する仲間ってことですよね?
その通り。これが一番怖いポイントだね。単なる「武器商人」から、「血を流す同盟」へと質が変わってきている可能性があるんだ。
北朝鮮の兵士が実際にウクライナで戦ったりしているんですか?
公式には否定されているけど、技術将校や工兵部隊が現地に入っているという情報は絶えないね。北朝鮮軍にとって、現代戦の実戦経験は何よりの財産になるからだ。
うわあ、それは日本にとっても脅威ですね。実戦経験を積んだ軍隊が近くにいるなんて…。
そうなんだ。ウクライナの戦場が、北朝鮮軍の「実験場」になっているという見方もできる。これは欧州だけの問題じゃないんだよ。
このニュースの核心は、ユーラシア大陸の東と西の紛争が一体化してしまった点にあります。
かつては「欧州の安全保障」と「アジアの安全保障」は別物として扱われてきました。しかし、北朝鮮製のミサイルがキーウ(キエフ)に着弾し、ロシアの技術で作られた北朝鮮の衛星が日本上空を飛ぶ現在、その境界線は消滅しました。「欧州の危機はアジアの危機」という言葉が、現実の脅威として具現化しています。
特に懸念されるのは、核・ミサイル技術の拡散です。ロシアが北朝鮮の「無条件支持」への見返りとして、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の大気圏再突入技術や、小型核弾頭の技術供与に踏み切るリスクが高まっています。もしそうなれば、北朝鮮の核脅威はレベルが数段上がり、日米韓のミサイル防衛網を無力化する恐れすらあります。
誰が得をし、誰が損をするのか

ここで少し視点を変えてみよう。この「ロ朝蜜月」を、周りの国々はどう見ていると思う? 特に中国の立場が面白いんだ。
中国ですか? さっき「距離を置きたがっている」って言ってましたけど、やっぱり嫌なのかな?
複雑なんだよ。米国を困らせるのは歓迎だけど、自分のコントロールが効かないところで勝手に軍事同盟を作られるのは面白くない。中国は「親分」でいたいからね。
なるほど(笑)。子分同士が勝手に手を組んでるみたいな。じゃあ、日本やアメリカはどうですか?
当然、警戒度MAXだね。でも、トランプ次期大統領の支持者たちの中には、違った見方をする人もいるかもしれないよ。
えっ、どういうことですか? 敵が強くなるのに?
この状況は、立場によって全く異なる景色が見えてきます。
1. 中国の視点:不快感と利用価値のジレンマ
習近平指導部にとって、ロ朝の急接近は「諸刃の剣」です。米国のアジア回帰を牽制する防波堤として機能する一方、北朝鮮がロシアの後ろ盾を得て中国の制御を離れ、暴走するリスクを懸念しています。中国は、朝鮮半島の安定を望んでおり、ロ朝が引き起こすかもしれない軍事衝突に巻き込まれることを何より警戒しています。
2. ロシア・北朝鮮の視点:生存のための互助会
彼らにとってこれは、西側諸国の制裁包囲網を突破するための「生存戦略」です。西側経済圏から切り離されても、独自のブロック経済と軍事供給網があれば生き残れるという実証実験を行っています。彼らは、「世界の分断」こそが自分たちの延命につながると考えています。
3. 西側(日米韓)の視点:複合的な脅威の出現
これまでは「北朝鮮問題」「ウクライナ問題」と個別に対処できましたが、今後は連動する脅威として扱う必要があります。例えば、台湾有事の際にロシアが北朝鮮を焚きつけて第2戦線を開く、といったシナリオも現実味を帯びてきます。安全保障コストの増大は避けられません。
4. トランプ支持層(孤立主義)の視点:他岸の火事
「アメリカ・ファースト」を掲げる層からは、「ユーラシアの独裁者同士がくっついているだけだ。我々が関与しなければ害はない」という意見が出る可能性があります。彼らは、高いコストを払ってまで世界の警察官を続けることに懐疑的であり、このニュースを見ても「介入すべき理由」ではなく「撤退すべき理由」と捉えるかもしれません。
トランプ政権誕生で世界はどう動く?

もうすぐトランプさんが大統領になりますよね。この「無条件支持」宣言を受けて、どう反応するんでしょうか?
トランプ氏は以前、金総書記と個人的な関係を築こうとしたよね。今回も「強いリーダー同士の取引」で解決しようとするかもしれない。
あー、トップ会談とか好きそうですもんね。でも、プーチンさんとも仲良くしようとしてましたよね?
そう。だからこそ危険なんだ。トランプ氏が「ウクライナ支援を止める代わりに、北朝鮮を抑えてくれ」とプーチン氏に持ちかける…なんて「ディール(取引)」が起きないとも限らない。
ええっ!? それってウクライナや日本にとっては…。
非常にリスキーだね。同盟国の頭越しに大国間で話が決まってしまう可能性があるからだ。
今後の展望として、以下のシナリオが考えられます。
- 短期的緊張の高まり(2026年前半)
トランプ新政権の足元を見るように、北朝鮮がICBM発射や核実験などの挑発行為に出る可能性があります。「我々を無視するな」というアピールです。ロシアもこれに合わせて、ウクライナでの攻勢を強めるでしょう。 - 「ディール」による一時的な安定と副作用
トランプ大統領がプーチン・金正恩両氏と直接交渉し、表面的な緊張緩和が演出されるかもしれません。しかし、その代償としてロシアの占領地容認や、北朝鮮の核保有の事実上の容認が含まれるリスクがあります。これは長期的には核拡散の連鎖を招き、世界の安全保障環境をより不安定にします。 - ブロック経済化の固定
ロ朝の結束は、西側経済圏に対抗する「制裁逃れ経済圏」を完成させつつあります。これにより経済制裁の効果はさらに薄れ、世界経済は「民主主義圏」と「権威主義圏」に完全に分断される恐れがあります。
分断される世界地図の最前線

金正恩総書記による「対露無条件支持」の表明は、遠い国の出来事ではありません。それは、欧州の戦場とアジアの安全保障が不可逆的にリンクしたことの証明です。トランプ次期政権の発足を前に、ユーラシア大陸の権威主義陣営は、西側諸国との分断線をより深く、より強固なものにしようとしています。
私たち日本人は、北朝鮮のミサイルの背後にロシアの影を、そしてウクライナの戦場に北朝鮮の影を見る必要があります。「事実・背景・解釈」を冷静に切り分け、激変する国際情勢の中で自国の立ち位置を見定めていく知性が、今まさに求められています。